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2018年7月10日
米アップル 弱気覆した課金ビジネス、1~3月収入1兆円 脱・端末依存 着々と: 西八王子店

米国企業の2018年1~3月期決算でウォール街に驚きをもたらした代表格がアップルだ。純利益は138億ドル(約1.5兆円)と前年同期比25%増え、市場の弱気予想を覆した。けん引役は音楽配信など継続的に課金するサービス部門のビジネス。スマートフォン(スマホ)の製造・販売会社から世界で13億台が稼働する「アップル経済圏」の運営会社へ。その変化を市場は見誤った。
 
1599ドル(17万円)という参加費にもかかわらず、アップル端末上のアプリ開発を手がける約5千人が世界中から毎年押し寄せる。米カリフォルニア州サンノゼで6月4日から始まるアップルの年次開発者会議(WWDC)だ。新しい基本ソフト(OS)やサービスの発表が見込まれ、株式市場の注目度も高い。
スマホのiPhoneやパソコンのMacなどアップル製端末は世界で13億台が稼働する。アップルは端末を通じて顧客にアプリやサービスを提供し、端末販売に依存した収益構造からの脱却をめざす。WWDCに集まる開発者たちがこの独自の経済圏を支える。
 

 

音楽配信に勢い
「エコシステム(生態系)の価値を高く評価している」。1~3月にアップル株を約4割買い増して第3位株主に浮上した米著名投資家は、追加購入の理由をこう説明した。端末を通じたサービスに消費者が継続的におカネを落とす高い収益性を評価したわけだ。
だが多くの市場関係者はアップル経済圏の拡大スピードを見誤っていた。
1~3月期のサービス部門の売上高は前年同期比31%増の91億ドル(約1兆円)。米ゴールドマン・サックスによると特殊要因を調整すれば12年以降で最も高い増収率となり、市場予想(平均87億ドル)も超えた。サービス部門だけで米上場企業の売上高上位100社に入り、1~3月の楽天の国内電子商取引流通額(8576億円)もしのぐ。
サービス部門を引っ張るのは音楽配信「アップル・ミュージック」だ。無料試行期間を含めた有料会員数は約5千万人に達した。自社端末で優先的に楽曲を提供する強みを発揮し、世界首位スポティファイ(約7500万人)を猛追する。最大市場の米国では年内にも両社の会員数が逆転するとの予想も出ている。
全体に占めるサービス部門の売上高比率は1~3月で15%だが、収益への貢献はより大きい。UBSは同部門の粗利益率を55%と推計。売上高の過半を占めるiPhone(39%)よりも高い。
スマホの普及率上昇と買い替えサイクルの長期化で端末販売の鈍化は避けられない。最高機種「X(テン)」を含むiPhoneの販売台数は1~3月に前年同期比3%増にとどまった。端末販売の落ち込みをサービス部門の収益拡大で補う戦略の成否はアップルの今後の成長を左右する。
 

 
一方、アナリストは端末依存から抜け出せていなかった。アナリストの多くはiPhoneの需要調査を基に業績を予想しており、そこに別のサプライズが潜んでいた。
製造受託会社や部品供給会社がスマホ出荷台数の先行きに慎重姿勢をみせており、決算前にアップルの業績予想を下方修正する動きが相次いだ。
「在庫増がノイズ(雑音)を出した」。決算前にiPhone販売台数予想を下方修正していた米モルガン・スタンレーのアナリストは釈明に追われた。1~3月期の在庫は前四半期比73%増と過去最大の伸びを記録。会社は詳細な理由を明らかにしていないが、部品大量購入でコストを下げる狙いとみられている。
 

 
変わる収益構造
1~3月の反動減で4~6月以降のアップルの部品発注は減少する。部品会社の声を聞いたアナリストたちはスマホ販売の減速の証拠とみて業績予想を引き下げていた。だがアップルが提示した4~6月期の業績見通しは市場予想を上回った。
「今の株価は割安」。アップルの最高経営責任者(CEO)は約1千億ドルの自社株買い枠を設定した理由をこう説明した。アップル株の予想PER(株価収益率)は15倍台と米主要500社平均(17倍)を下回る。市場が収益構造の変化をまだ織り込みきれていないとみているのだろう。

 
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